過去からの夏、夏からの未来

  • 2010.08.15 Sunday
  • 10:01
過去からの夏、夏からの未来

サマーウォーズ(理一×侘助+佳主馬×健二)

それぞれの出会いと、心の行方。

恋未満から恋人志願な、あの夏を主軸にした二組の物語


 400円(+送料80円)
 

     序


 総てが終わった。
 夏は始まったばかりであったが、白み始めた空が、侘助にこの夏の終わりを告げていた。
「……」
 失ったモノは戻らないのは分かっていたが、それでもそう簡単にあきらめれるものでもないから、今日の始まりから主が居なくなった部屋の前で祈りつつ、ただ佇んでいた。
 しかし明るさを増した空に現実を受け入れる決意をして、振り切るようにその部屋に背を向け外に向けて歩き出した。
 とはいえ、簡単に割り切れる筈が無く、後ろ髪を引かれるように亀並みのスピードでしか動けなかった。
 昨日きちんとお別れをしたのだ。
 これ以上自分に恥ずかしくないように、栄が誇れるように責任を取ろうと決めた筈なのに、未練が侘助を引き止める。
 でも、駄目だと、再び頭を振り、再び自分に言い聞かせる。
 自分が求めた事から始まった以上、責任を取る必要があるのだ。
 そう、例え誰が責めなくても、ラブマシーンを作って入れようとしたのが事が間違っていたと言う結果がでていて、例え自分が一番求めた筈のものを失ってしまったのだとしても、作ったのは自分。
 終わらせてしまったのは自分の所為だからと言い聞かせて、歩みを早める。
「乗せてってやるよ。」
「!」
 誰も起きてないと、思っていたから、いきなりかかった声にまずはビックリし、車の陰から現れた姿に一瞬いらだちを感じる。
「……なんで、お前が、」
「アレを返さなきゃいけないんでね。」
 指差す先に見えるのは、今回活躍したデジタルネットワーク実験車両。
 まじまじと見て今更ながら、良くこんなものが持って来れたな。と思う以上に理一を謎に思う。
「で、ばあちゃんに挨拶しなくていいのか?」
「……」
「侘助?」
「……もうした。」
「そっか、じゃぁいくか?」
「なんで、お前と……ほっといてくれ、」
 先ほどまで自分の中にくすぶっていたしんみりとした思いが、理一への反発で、消えてしまう。
 最初っから欲しいものを総て持っている理一の事が侘助は嫌いだった。
 この家に来てから、気にしていない振りをしていても、同い年でもある為に何かと比較される事が嫌で無視し続けていた。
 それでも最初の夏から中学、高校と一定の距離を保つ努力をする程に、理一は構わず今、この時と同じ様に何度も寄ってきた。
 しかしそれも高校を卒業するまでで、特に十年前にヒドい言い合いをしたことで、理一にも嫌われていると思っていたから、今こうして声をかけられるのが不思議だった。
「でもよ、この辺交通手段ないぜ?」
「……」
 確かに駅まで歩いていくには二時間では利かない程の距離がある。
 勿論この時間にバスや、流しのタクシーがある筈も無く、呼ぼうにもラブマシーンの混乱はまだ完全に終息していないようで、断られた。
 だからといって、素直に頷けない。
「泣くなら一人がいいってか?」
「っ!」
「見ないでおいてやるから、好きなだけ泣けばいい。」
 そう、理一は何故か侘助の微妙な部分、心情を嫌な程当てて突きつけてくる。
 必死に隠している、あれもこれも、何もかもを当てる事が嫌だった。
「きちんと泣いておけ。」
 そんな所が、嫌いだった。
「必要な時に、きちんと泣いておけ。」
 そういって理一は実験車両の助手席に力ずくで侘助を詰め込んだ。
「なにをするんだ。」
「だから、見ないでやるから、ちゃんと泣いておけ。」
 必要な時に泣いておかないと、また間違うぞ。と繰り返し、見ないでおいてやるという言葉を実践するかのようにどこに用意していたのか特注ではないかと終える程に大きなバスタオルを侘助の頭の上に広げて被せた。
 そして、ゆっくりと車が動きだす。
 でも、泣けないし、ここまでされる覚えが無い。
「なんで、お前はこんな事を、」
 たとえ、ともに戦ったモノだとはいえども、蓄積された事から嫌われている事に自信があった。
 なのに、
「そりゃ、お前の事が好きだからだよ。」
「え、」
「ずっとお前の事を見ていたんだぜ?」
 でなければアメリカ行きの時に、親戚一同を欺いてまで祖母のお使いをするはずがないだろう、そう理一は言う。
 だから今は役得なのだという。
 自分だけの秘密にしておいてやるから、泣きたいだけ泣けばいいと理一は言った。
 あまりの事に混乱する。
 好きなのは、気にしていたのは侘助自身だとおもっていた。
 それが違うのだというのだ。
 静かに、好きだから何でもしたいんだよ。そういわれて、繰り返し泣いておけと、ささやかれて、そして、何かが壊れ、涙腺が崩壊した。
 いろんな感情が入り乱れて涙がこぼれだして止まらなくなた。
 だから掛けられたバスタオルを深く被り直し、そして我慢する事を放棄した。
 そして、
「……ババア……」
 そして、小さな声がエンジン音にまぎれて零れた。
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