対 ーついー

  • 2006.08.13 Sunday
  • 23:50
オリジナルJUNE

運命の猫耳シリーズ第2段。運命の人。猫耳という印もあり、番である事は明確で、相手は一番に、大事にしてくれる。でも、ただ一緒にいるだけでキスすらしてもらえない。そうして、過ぎる月日に不安だけが積み重なって……

500円(+送料80円)


>>>一部紹介<<<


     序

「ちぃせぇ。」
 その日、喬巳は母親や兄達と一緒に母方の実家に来ていた。
 その声は増築の結果複雑になった田舎の大きな家は、何にでも興味を抱く喬巳には格好の遊び場で、一人で奥を探検している時に聞こえた。
 呟くような小さな声だったが、喬巳にはその言葉がはっきりと聞こえた。
 クラスの誰より、女子を含めても一番小さい所為で、日頃よりからかわれ気にしていただから、特に小さいという言葉に顕著に反応していた記憶が有る。
 だから、その時も即座に反応し、聞こえた声に年上だと判断しつつも、文句を言うつもりで、舐められてはいけないと必死作った怒った顔をで振り返った。
 しかし、
「いた!」
 いきなり摘まれた耳。
 しっかり、はっきり掴まれた感触に、文句の言葉は吹っ飛び、喬巳はおののいてしまった。
「へぇ、こんなちっさくても感覚あるんだ?」
「当たり前だろ。」
「そりゃそうだな。」
「そうだよ……じゃなくて、なんで?」
 予想外の出来事に、何を聞いたら良いのか喬巳は判らなくなっていた。
 日頃から大人びている。と言われてはいたが、この時喬巳は小学一年生、まだ六歳でしかなかった。
「なんでって、見えたのは見えたからなぁ……やっぱ番なんじゃねーの?」
「……番……運命……」
 母親から聞かされたお話。
 一族に伝わる物語。
 自分の運命の人を見つける為にはえる、運命の相手だけにその存在を示す耳によって示される、番という名の運命の物語。
 嘘みたいな物語。
 正直、喬巳にはまだ難しくて、良く判らない事だらけであたが、自分だけに見える耳が生えていたから信じていた。
 とはいえ、母親は別として、運命と言う言葉は学校では馬鹿にされ、今まで誰にも見られる事がなかったから、気にしないようにしていた。
 それに喬巳の耳は、髪に埋もれてしまう程の小さい耳だったからすっかり忘れていた。
 それがだ、
「本当に、見えるのか?」
「ああ。」
「じゃぁ、番なのか?」
「さぁな。それを示すすべはないからなぁ。でも耳は見えるぞ……ってか、うん、聞いてはいたんだけどな」
「……」
「本当、まさかだよなぁ。」
 ちっこいけど本当に耳だなと、ふかふかだなと彼は言う。
「本当、マジで耳が見える時が来ようとは、」
 彼はそう呟く。
 そして喬巳は、そう呟く彼にしっかり耳に触れられ、実感する。
「……本当に、」
 彼は頷いた。
 その時初めて喬巳は気が付いた。
 甘いような、それでいて爽やかな、何だか引き付けられる香。


 それが彼――根岸尚司と里中喬巳の初めての出会いだった。
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