Daliy Life

  • 2007.05.13 Sunday
  • 23:43
ひきこもり探偵:坂木x鳥井本

日常『風邪』『また明日…』と例のあの日を迎えた心の葛藤『月曜日の魔法』の3つ、いずれも鳥井視線。コピーの再録を含みます。

200円(+送料80円)
>>>掲載より一話<<<


■また明日…


「じゃぁ、また明日。」
 そういって閉じられた扉。
 怖い。
 鳥井の身体を震わせた。
 そう、別に来なくても構わない。来なくても平気だ。という風に坂木には示し、見送りながらも実際には明日この扉が開かない事を鳥井は怯えていた。
 毎日、毎日怯えていた。
 そう、彼が出て行った扉に縋りながら、今すぐにでも戻って来る事を切に祈ってしまう程に、怯えていた。
 大丈夫。
 だいじようぶ。
 言い聞かせるようにそう呟きながらも、鳥井は思考が段々危ない方に傾いているのを自ら気付きつつも、悪い方に考えがいく事を止められなかった。
 暗黙の了解。
 それは坂木がここにくる事。
 それは明文化されたモノでは無いから、不安になるのだ。
 でも、約束を求めるなんてどうしたって出来ない。望んではいけない。
 自分は大丈夫だ。と示したから、
 違う、もしもが恐いから。
 そう、何故なら今の鳥井は、彼がいても時折壊れてしまう。
 彼という掛橋がいても、鳥井は段々と現実が、未来が恐くって、今を繋ぎ止めれなくなりそうになっていた。
 だから彼の姿が見えなくなれば、更にそれが顕著になる。
 彼が居ないだけで、なにもかもが歪んでしまう。
 大丈夫。
 また、来てくれる。
 一分、いや十分、もしかしたら一時間かもしれない。
 理解と認識。
 この違いを思い知るには、今のこの時間ほど最適なものはない。
「……あしたはなにしよう……」
 大丈夫。
 絶対に大丈夫だから。と鳥井は自分に言い聞かせるように言葉を紡ぐ。
 坂木が喜ぶ事を考えながら、喜んでくれる。大丈夫と、何度も、何度も、呪文のようにいい聞かせて意識を現実に戻す。
「そう、しちゅー。」
 一生懸命現実に意識を戻す。
 食べたい。そういった彼を、彼との時間を反芻する。
「いちにちねかしたほうがおいしい。」
 ふと浮かんだ言葉。
「おいしいと、さかきがよろこぶ。」
 それが活力になる。
 脳裏に浮かぶ彼の笑顔は、鳥井の心の糧になって、胸の奥の方で小さな火を灯し、そして強ばっていた身体を徐々に解いてくれる。
 そうやってやと身体を僅かずつでは現実に戻どし、ゆっくりと、のろのろとでは有るが、玄関から這うように部屋に戻る為の力を与えてくれる。
 死。
 考える事が無かったか? と言えば嘘になる。
 でも、生きるより死ぬ方が勇気とか、気力と、いろんなモノか沢山必要だっただけ。
 それに、
「さかき。」
 呪文。
「さかき。」
 大切な言葉。
 宝物。
「そう、坂木が言っていた。」
 総てが、自分の総てが現実に戻って来たのが解る。
「そろそろ寒くなってきたからシチュー食べたい。と言ってたよな。」
 坂木の為。
 それが呪文のように鳥井を現実につなぎ止めてくれる。
 違う。
 坂木を自分のモノにしておく為に、弱いのかもしれない。
 そう思う時が有る。
 だから、彼が約束を破る事なんか無いと判っていて、不安になるのだ。
 世界に坂木と自分しかいなければこんなに不安にならなくて済むのに。
 再び入り込みそうになる後ろ向き直な思考を、現実に再び呪文の言葉を呟きながらつなぎ止める。
 明日、坂木がここに来てからの時間を十二分に確保するために、鳥井は立上がり、まずキッチンに向かう。
 坂木に喜んでもらう為に準備をする。
 そして、仕事に取り掛かる。
 そう、働いている事を示すと、坂木が嬉しそうにする。
 頑張ってるね。と誉めてくれる。
 外の空気すら嫌だけど、坂木に居心地よく過ごしてもらう為に、窓を開け、外気を入れて、部屋を清潔に保つ。
 そうすると坂木が喜ぶ。
 坂木の喜ぶ顔が見たいから、頑張る。
 明日の日が暮れる頃に、お帰り。と迎える為に。
 絶対に、笑顔を見る為に、鳥井は仕事にとりかかった。

・END・
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